“ポストコロナ”における付加価値の高いトータルソリューションの提供へ
2024年は原油や原材料価格の高止まり、海外情勢など昨年から続くリスクの増大、そして働き方改革関連法の改正による、いわゆる物流・運送業界の「2024年問題」に直面しています。労働力不足がさらに進み賃金も上がっていきます。厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所(社人研)が公表しました地域別の推計人口で、2050年時点の15〜64歳の生産年齢人口は全国で5,540万2千人となり、2020年と比較したところ26.2%減少し、全国で4割に当たる699市町村が半減するとのこと。横ばいか、増加するのは千葉県や東京都などの19市区町村だけでした。働き手の中心を担う年齢層が大幅に減ると、地域の産業や福祉の人材不足に直面するほか、自治体運営や交通・物流の維持が困難になる恐れがあります。
また、世の中には「社会通念(ノルム)」というものがあります。「こうあるべき」、「こうあらねばならない」という人々の暗黙の了解であり、それらは時に強力な社会の規範にもなります。日本社会ではこれが典型的に表れていたものの一つが賃金と物価の抑制です。「賃金が上がらないのは当然だから我慢して働くべき」、「企業はいいものを安く売るのが当たり前だから1円も値上げしてはならず、物価は据え置かれるべき」と。こうした人々が当たり前だと思っていた意識が昨今、急速に変化し、20年にもわたるデフレの時代から、インフレの時代への転換が本格的に始まろうとしています。日本の物価は2022年の春から上昇し始め、2022年末の消費者物価指数(CPI)は4%を記録しました。消費者物価は食料品などの生活必需品に該当する「モノ」と、飲食やホテル、医療、娯楽、交通などに該当する「サービス」に大別されます。日本のインフレは海外から輸入した原材料やエネルギー価格の上昇が原因であり、企業がそれを価格転嫁したことで「モノ」の価格が上昇しました。輸入物価の上昇はすでに一服し、2023年8月から9月をピークに少しずつインフレ率が下がり始めています。輸入物価の上昇は、果てしなく続くものではありません。一方、「サービス」の価格も上昇しています。サービスの原価は人件費の割合が高く、輸入価格上昇による影響は限定的で、当初はそれほど伸びませんでした。しかし、コロナ禍明けのインバウンドや国内旅行需要の増加によって、宿泊料金などのサービス価格は上昇しており、サービスのインフレ率はモノと同程度になっています。昨今の人手不足もあり、今後はじわじわと上昇していきます。コロナ禍明け2023年は、インフレを起こす“主役”が「モノ」から「サービス」に移行した年であり、今年はさらに顕在化し、インフレが緩やかに持続していくことでしょう。バブル崩壊後の90年代初頭から一昨年までの日本だけが高度経済成長期や安定成長期のような成長が見られず、経済の低迷や景気の横ばいが続いた、いわゆる「失われた30年」の歴史に終止符を打って、あらゆる分野で技術革新をもたらせて安定成長路線へと大きく変革をしていかなければならない歴史的な転換期を迎えていると感じています。こうした社会情勢のなかで、私たちの業界でもおしぼりを巡る急激な変化に適応し、安定成長への転換点に向けて、全国おしぼり協同組合連合会では昨年より次世代を担う若手第二世代並びに第三世代の経営者が活発な交流や研修を重ね業界の永続的な発展のために革新的な取り組みに臨んでおります。また、2014年から開始しました業界独自の“おしぼりアドバイザー”の研修・検定の継続実施により、ルートスタッフの高い意識レベルの醸成と技能スキルの向上を図ることによって、人材資源の定着と持続を可能とした労働環境の整備と雇用確保にも繋がっています。引き続き「正しいレンタルシステムの構築」に向けて、ルートスタッフが日常業務に活かせる集配業務の知識や技能の修得に務めて参ります。こうした組合事業の取り組みは自己投資への強い動機付けにもなり、組合員企業の活力の向上と成長への源泉にも繋がると考えております。戦後復興期に活躍しました経営指導者の新保民八の言葉に、「正しきに 依りて滅ぶる 店あらば 滅びてもよし 断じて滅びず」という格言があります。この言葉の次に続く「古くして古きもの滅び、新しくして新しきものまた滅ぶ 古くして新しきもののみ 永遠にして不滅」この言葉の前半は事業の“あり方”を、後半は“やり方”を指しています。“あり方”が成熟していても、“やり方”が時代と顧客ニーズからずれ、革新性を失えば滅びる。“やり方”が革新的でも、“あり方”が未熟ならばやはり滅びる。唯一、永遠にして不滅たりうるのは、“あり方”が成熟している者の“やり方”が時代と顧客ニーズの変化に対応し、革新性を持ち続ける場合のみであると説いています。次世代の担い手とともに、目の前の課題に向き合いながらポストコロナにおける時代と顧客ニーズの変化へ対応する革新力と既成概念にとらわれない新しい発想力で、“おしぼり”という「モノ」「サービス」を活用して、付加価値の高いトータルソリューションの提供に努めて参ります。新年度も引き続き、当組合活動にご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げます。最後になりますが、組合員企業の皆さま方、そして、推薦協力業者の方々の益々のご隆盛とご発展をご祈念いたします 。
2024年 6月 吉日
第17代 理事長 小此木 正信