トップ > R25に掲載されました

R25に掲載されました

第12回 ああ気持ちいい!おしぼりの“上出来”後編

実は環境にもすごくやさしいおしぼりのリユースシステム
日本古来の“おもてなし精神”をいまに伝える「貸しおしぼり」。東京都足立区に本社があるアールエスエスは、昭和39年創業というこの業界の老舗だ。首都圏に5つの工場を持ち、270人の従業員と70台のトラックをフル回転させて、1日100万本の貸しおしぼりを出荷している。取引先は都内主要ホテルや居酒屋・レストランチェーンなど1万軒以上。12年前に父である先代から社長を引き継いだ石川拓彦さんは、創業当時の苦労話をよく両親から聞かされた。


「父がトラックで取引先をまわって使用済みおしぼりを回収し、5~6台並べた家庭用洗濯機で洗濯・脱水したタオルを、1枚1枚巻いて袋詰めにする。そのすべてが手作業でした。毎日夜遅くまで、二人で黙々と働いていたそうです。
現在でも、回収→洗濯→検品・パッキング→出荷という工程は基本的に当時のまま。一度におしぼり8000枚が洗える大型洗濯機や金属検出器など、一部で機械化が進んだものの、1枚1枚検品して二つ折りにする作業はいまも人の手に頼っている(その後の巻き上げとパッキングは自動)。ベテラン作業員になると、1人で1時間に1200枚のおしぼりを仕上げるとか。配送マンも重労働だ。水を含んだおしぼりは重く、200~300本入りのコンテナは1個で約20kg。それを2~3段重ねて、1日100軒以上の取引先をまわる。ちなみに、おしぼり1枚あたりのレンタル料は昭和30年代当時からそれほど上がっていない。
「きわめて地味な仕事ですね。作業の効率化が進んだからこそ、どうにか商売としてやっていける。排水処理施設には1工場あたり数千万円かかるし、これからこのビジネスに参入しようという人はまずいないのでは?」と石川さんは笑うが、それでもこの仕事を続けているのは毎日必要としているお客さんがいるからだ。
おしぼりは実は“生もの”。工場では70℃以上のお湯で15分間以上洗濯し、4回のすすぎと塩素殺菌を施しているが、塩素は徐々に抜けてしまうため、遅くとも1週間以内に使い切ってもらわなければならない、当然作り置きもできず、毎日作り続けることになる、事実、工場と配送は土曜も祝日も休まず稼働している。
「貸しおしぼりは、私たちの先達が作り上げた理想的なリユースのシステム。同じおしぼりを何度も洗って使うため、何かに作り変えるリサイクルより環境負荷が小さい。1枚のおしぼりは40回ほど使えますが、生地が薄くなって破れたものは、今度は工業用ウエス(雑巾)としてまとめて販売します。この環境面での優位性を今後はもっとアピールしていきたいですね」
キツい仕事だけに、従業員一人ひとりにこまめに声かけするなど、そのモチベーションの維持には常に気を使っているという石川さん。ほっと息をつけるのは、本社2階の向上からおしぼりを取ってきて、一人で一服するとき。できたてのおしぼりは、かすかにプールの匂いがする。自社のおしぼりを愛しそうに顔にあてる石川さんの姿は、まるで我が子にほおずりしているように見えた。ここにも、まさに“上出来”な瞬間がある。

今回のまとめ
局長「おしぼりの歴史が平安時代から続いていたとは、まさに驚きだな!」
局員「あのくるくる巻かれたおしぼりには、“おもてなしの心”が詰まっていたんですね」
局長「この世知辛い時代、東日本だけで1日800万の“おもてなしの心”が行き来しているんだな…。いい話じゃないか」
局員「しかも、いまでも1枚1枚手で折っていたなんて…。ボク、これからはおしぼりを大切に使います」
局長「うむ。貸しおしぼりは環境にもやさしいシステムだし、あのおしぼり1本1本が“上出来”のカタマリみたいなものだな。こんな素敵な“上出来”をこれからももっと探していこうじゃないか」


全編に戻る

▲ページトップへ